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臓器移植法に関する脳神経外科学会の基本的考え方と要望



平成9年6月、国会にて臓器の移植に関する法律(以下臓器移植法)が成立し、10月にはその施行の時期を迎えようとしている。この法案に関して、脳神経外科学会としては脳神経外科診療の現場に不用の混乱を招かないために、以下の点が特に重要と考え、国民の理解と関係当局の善処を要望するものである。 臓器移植法案は臓器の移植に際して「脳死したものの身体」を死体であると認め、移植術に使用されるための臓器の摘出を認めている。この法律は臓器移植を行う場合に限って、脳死の定義とその判定について定めたものであり、臓器移植と直接関係の無い脳死については全く言及していない。 しかしながら、この法律による脳死の定義が拡大解釈され、従来脳神経外科において行われてきた診断・医療行為に制約を加える結果となる可能性がある。「脳死したものの身体」とは、同法の第六条第2項において『その身体から移植術に使用されるために臓器が摘出されることとなる者であって脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されたものの身体』であると定義されている。もしこの定義が一般の脳死を定義するものであれば、移植術を前提にしない限り、脳死とは判定できないということになる。脳死の判定は、本来医療チームが患者の家族への適切な説明を行い、家族の充分な理解のもとに行われるべき重要な病態把握、予後判定のための基本的医療行為である。また、適切な手順で脳死と判定された場合に、その後どのような診療を行うべきかは患者本人のリビングウィルと家族の意志を尊重して医療チームが対応するべき事項である。脳神経外科学会は、脳死判定という重要な診断行為が今後とも新たな制約を受けないことが重要であると考えている。 脳死の判定については、いわゆる竹内基準が必要な条件を基本的に満たしていると考えている。しかしながら、臓器移植法に関する参議院「臓器の移植に関する特別委員会の附帯決議」の第七条において、脳死の判定に脳低体温療法を行っていることが条件とされていることは適切であるか否か疑問である。脳低体温療法は脳死に至る前の重度脳損傷患者に対して可能性のある治療法の一つとして注目されている所であるが、その適応・限界・副作用などについての評価は未だ確立されてはいない。従って、全ての症例において、脳低体温療法が行われたか否かを脳死判定の前提とすることは適切ではないと考える。
平成9年7月29日
日本脳神経外科学会会長 早川 徹
日本脳神経外科学会 運営委員会

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