第34回 日本脳神経外科学会
専門医認定委員会報告

 

委員長:吉本高志

副委員長:田中隆一,端 和夫,堀 智勝

委  員:阿部 弘,伊藤治英,生塩之敬,小川 彰,
大本堯史,嘉山孝正,河瀬 斌,神野哲夫,
桐野高明,久保田紀彦,児玉南海雄,小林茂昭,
榊 寿右,玉木紀彦,寺本 明,貫井英明,
橋本信夫,福井仁士,山浦 晶,山下純宏,
山本勇夫,吉田 純

出題委員:阿部俊昭,山田和雄,松谷雅生

情報処理委員:間中信也,永田 泉,藤巻高光,渡辺英寿

会場委員:佐々木富男,伊林至洋,上出廷治,川合謙介,
川俣貴一,近藤健男,城倉英史,高橋英明,
竹内茂和,中里信和,林 基弘,村垣善浩


脳神経外科学会事務局

 

第34回専門医試験は以下のように行われた.


筆記試験:7月10日(土)
場  所:サンケイホール
口頭試問:8月7日(土),8日(日),9日(月)
場  所:東京国際フォーラム

 


受験者総数:386名

最終合格者:238名(61.7%)
筆記試験受験者:356名
筆記試験合格者:230名(64.6%)
口頭試問受験者:260名
口頭試問合格者:238名(91.2%)

 

合格率年次推移:1990年  68.1%
1991年  61.1%
1992年  59.6%
1993年  61.2%
1994年  62.2%
1995年  58.7%
1996年  57.7%
1997年  61.6%
1998年  58.0%
本 年  61.7%※


※1990〜1998年までは,全受験申請者を対象とした合格率になっているが,本年分は欠席者を除く実際の受験者を対象とした合格率となっている.

 


筆記試験:250題(5肢中1〜3肢選択)

1. N関門(神経解剖,神経生理,神経病理,薬理,臨床神経など):40題
T関門(腫瘍,感染):70題
V関門(血管障害,末梢神経,機能的脳外科):70題
I関門(外傷,脊椎,脊髄,小児脳外科):70題
2. 妥当性チェック
除外基準(合否判定に用いないもの)
1) 上位1/4の正解率が20%以下
2) 識別指数(上位1/4と下位1/4の正解率の差)がマイナスの問題

 

筆記試験例題:20題

1. AIDS例の中枢神経病巣について正しいのはどれか.3つ選べ.
A 約10%の症例で,初発症状は中枢神経の病巣による.
B 1/3以上の症例で,中枢神経のopportunistic infectionや新生物を伴う.
C トキソプラズム血清陽性例では,抗トキソプラズム療法を2週間行い,効果がなければbrain biopsyの適応がある.
D 中枢神経に最も多く見られる病巣はHIV encephalitisとcryptococcusである.
E 2種以上の病巣が中枢神経に見られることは稀である.

 

2. 抗けいれん剤内服中の女性に抗けいれん剤の催奇性について質問を受けた.適切でない説明はどれか.2つ選べ.
A 多剤の併用をさけるべきである.
B 血中濃度は有効域内であれば特に問題ない.
C 一般の妊娠の場合の2〜3倍奇形発生率は高い.
D 妊娠末期にも抗けいれん剤の増量は必要ない.
E バルプロ酸は比較的安全である.

 

3. lamina terminalisから内視鏡を挿入して第三脳室内を見た写真を示す.手綱交連(habenular commissure)はどれか.1つ選べ.
A
B
C
D
E
 

4. 基底外側辺縁回路(Yakovlev回路)を構成する部位で正しいものはどれか.3つ選べ.

A 前頭葉眼窩皮質
B 海馬
C 扁桃体
D 前交連
E 視床背内側核

 

5. くも膜下出血を来した61歳女性の右内頸動脈撮影側面像と左斜位像を示す.手術操作で有用なものはどれか.3つ選べ.
A 対側からのアプローチ
B 前床突起の削除
C 有窓クリップの使用
D suction-decompression法
E A2-A2バイパス

 

6. 46歳女性,くも膜下出血を来す.VAGを示す.妥当な処置はどれか.2つ選べ.
A 瘤内塞栓術
B STA-SCA吻合術と脳底動脈のコイル遮断
C pterional transcavernous sinus approach(Dolenc)によるクリッピング
D subtemporal anterior transpetrosal approach(Kawase)によるクリッピング
E transoral approachによるクリッピング

 

7. 次の疾患のうち血管内手術の対象となりにくいものを2つ選べ.
A basilar bifurcation aneurysm
B middle cerebral artery aneurysm
C carotid cave aneurysm of internal carotid artery
D dissecting aneurysm of vertebral artery
E thrombosed aneurysm of internal carotid artery

 

8. WHO分類の悪性度でgrade 2はどれか.2つ選べ.
A subependymoma
B gangliocytoma
C pineocytoma
D pleomorphic xanthoastrocytoma
E central neurocytoma

 

9. 14歳男性.頭痛,嘔吐にて発症.MRIと組織像を示す.最も考えられる診断はどれか.1つ選べ.
A germinoma
B pilocytic astrocytoma
C pineocytoma
D teratoma
E ependymoma

 

10. 65歳男性.肺小細胞癌の脳転移に対して,4年前に摘出術および50 Gyの全脳照射と25 Gyの局所照射を受けた.今回,左半身に痙攣をきたし来院した.造影MRI,proton-MRSを提示する.今後の治療として適切なものはどれか.1つ選べ.
A 再摘出
B ガンマナイフ
C 化学療法
D ステロイド療法
E 抗生剤投与

 

11. cerebellar mutismについての誤りを1つ選べ.
A 腫瘍の手術後に多い.
B 手術直後から発症する場合が多い.
C 小児に多い.
D 意識は清明である.
E 症状は改善しうる.

 

12. 肝硬変を伴った脳出血について正しいものはどれか.2つ選べ.
A 脳葉出血が多い.
B 肝機能検査の異常が必発する.
C 凝固,線溶系の異常が必発する.
D 血小板の補充が必要である.
E 肝硬変は脳出血の発症率を増加させる.

 

13. 35歳男性,3年前に一過性の右片麻痺があった.来院時は左顔面神経麻痺を認める.MRIを示す.手術を勧める理由となる項目はどれか.2つ選べ.
A 出血の既往
B 病変が大きい
C 症候が軽微
D 病歴が長い
E 到達が容易

 

14. 癌抑制遺伝子は次のうちどれか.3つ選べ.
A myc
B p53
C fos
D RB
E NF1

 

15. 65歳女性.左片麻痺にて発症.MRIと組織像を示す.最も考えられる診断はどれか.1つ選べ.
A meningioma
B malignant lymphoma
C central neurocytoma
D oligodendroglioma
E subependymoma

 

16. 62歳男性,頭部外傷のため頭蓋骨片を除去した.1ヶ月後に意識レベルの低下および右片麻痺の増悪を来した.頭部写真を示す.正しい記載を2つ選べ.
A 症状の悪化は遅発性神経細胞死による.
B 比較的強い炎症反応をみる.
C 頭蓋形成術は症状改善に有用でない.
D 頭蓋欠損部の脳血流は低下している.
E 脳脊髄液圧は低下している.

 

17. 50歳男性,階段から転落し右硬膜下血腫の手術を受けた.術後2週間のMRI(T2WI)示す.正しい所見を1つ選べ.
A Kernohan notch
B ワーラー変性
C 脳幹梗塞
D leukoaraiosis
E びまん性軸索損傷

 

18. spinal AVMの術中写真を示す.どのtypeに属するものか1つ選べ.
A intramedullary AVM
B perimedullary AVM
C dural AV fistula
D mixed AVM
E spinal telangiectasia

 

19. CT myelographyを示す.この疾患の診断はなにか,1つ選べ.
A lipoma
B dermal sinus
C meningocele
D diastematomyelia
E syringomyelia

 

20. 以下の先天奇形の中で発生時期が最も早いものを1つ選べ.
A agenesis of the corpus callosum
B lissencephaly
C polymicrogyria
D holoprosencephaly
E Dandy-Walker syndrome

 


妥当性チェックの除外基準の参考として上記20題の上位1/4の正解率=( )の左の数字,識別指数=( )の右の数字を記す.

 

口頭試問


各関門で以下の3問題が出題された.

1. Tumor, Infection

2. Vascular, Peripheral nerve, Functional surgery

3. Trauma, Spine, Pediatric



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